いま現在、目の前に広がる世界の在り方も、きっとどこかの誰かがつくったルールや基盤の上に成り立っています。
それゆえ、少し見方を変えてみれば、ときに魅力でなかったり、間違っていたりすることも。
そうした中、新たなルールや大義名分をもとに、もっと素敵な世界の在り方を呈示することでみんなを巻き込み、世界を変えていく“みんなでつくる新世界”の法則をご紹介します。
[Chapter 1] 事例から法則を読み解く
たった10年で“世界一の美食都市”に生まれ変わった街の話。
“世界一の美食都市”と呼ばれる街をご存知でしょうか。
スペイン北東部にある、人口わずか18万人に満たない街「サン・セバスチャン」がそれです。
この小さな街には何か特別な観光資源があったわけではなく、つい最近まで、観光客がわざわざ足を運ぶような場所ではありませんでした。
しかしたった10年ほどで、ミシュランの一つ星レストランが4店、二つ星レストランが2店、三つ星レストランが3店も集結する、「人口一人あたりのミシュランの星の数が世界ダントツ一位」の街へと生まれ変わり、毎年多くの人が海外から訪れるようになったのです。
彼らは何をすることで、この短期間で“世界一の美食都市”へと変貌を遂げたのか?
そもそも料理人の腕が上達しにくいのは、この業界が「とても閉鎖的である」という原因が挙げられます。
常に今の時代に求められる味を探求し、他の料理人と腕を磨き合う環境こそが上達への近道ですが、伝統の味を大切にするこの街の料理人のほとんどは、お互いに料理のレシピを情報交換することもなく、これまで弟子にしか技を伝承していませんでした。
しかし、よくよく考えれば、提供する料理のレシピとは、お店にとっては一番情報価値が高いもの。
料理人同士でレシピを共有し合って技を磨くということは、普通は「競合優位性」を失い「お客さんを奪われる」と考えますから、そのようなことは決して行われていないのが通例です。
では、弟子と料理の腕を研鑽し合えるのかというと、やはりそんなことはありません。
弟子は何年も皿洗いや店の掃除やらされながら技術を習得していきますから、まず料理を覚えることに何年も費やしてしまい、新しいことに挑戦しようにも期を逸しやすく、視野も狭まりやすい。
明確な師弟関係の中では、「腕を磨き合う」だなんて対等な立場で向き合えるはずもありません。
こうした問題意識から生まれた取り組みが、料理界では常軌を逸する「弟子制度の廃止」と「お店同士のレシピ共有」でした。
お店の壁を超え、料理人が互いのレシピを公開しながら腕を磨き合って、“世界一の美食都市に!”という共通の目標を掲げました。
そうすることで、世界中の最先端の料理技法を活発に学び合う風潮が生まれ、美味しい料理が次々と生まれていったそうです。
美食家を唸らすレシピがひとつ生まれても、特定のお店で「お客さんを独占する」とする動きが起きなかったのは、人口わずか18万人に満たない街では少ないパイを奪い合うことに意味がなかった、という外的要因も作用したと考えられます。
また、この街の料理人たちは「その地でしか獲れない食材を使って料理する」ことをポリシーとしているそうです。
レシピを真似ればそっくりな料理は世界中でつくることも出来ますが、彼らが作る料理は絶対にここサン・セバスチャンでしか食べることができません。
この話を知って、いつか一度、食べに行ってみたいと感じるのは僕だけではないと思います。
この事例において着目したいのは、「料理のレシピは門外不出のもの」という固定観念(ルール)を打ち破ったこと。
そして、より素敵な世界の在り方=世界一の美食都市という大義名分を掲げることで、みんなが結束していったこと。
参加ルールが明確かつ容易で、参加することで個々が自尊心をくすぐられる点も見逃せません。
また、おそらく出発点として、「このままでは伝統料理も街も廃れてしまう」という危機感があったのだと思います。
だからこそ、個人の利益に執着せずより大きな利をみんなで目指すことが出来た。
そうした文脈・背景もあって成立したのではないでしょうか。
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[ “みんなでつくる新世界”の法則|Point ]
◎不親切・不的確な既存のルール・慣習に対して疑問を抱くこと
◎多くの人にメリット(参加理由)のある大義名分=新世界を打ち立てること
◎明確で簡単な参加ルールがあり、参加することで自尊心をくすぐられること
◎その土地や時代の文脈・背景を読み解くこと
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[Chapter 2] 法則から事例を読み解く
企業に一致団結させて「エイズ問題」に取り組ませるには?
この章では、“みんなでつくる新世界”の法則を活用した他の事例をご紹介します。
この事例の題材は、アフリカの「エイズ問題」です。
細かくは説明しませんが、エイズが今なお世界的な社会問題であることは、周知の事実。
両親または片親をエイズによって亡くしてしまった18歳未満の子供をエイズ孤児と呼ぶそうですが、その数世界で1780万人とも言われ、その内の85%はアフリカに集中しています。(2012年当時)
南アフリカの女子学生の、実に4人に1人がエイズなんだそうです。
このような大きな社会問題に対し、当然個人の援助では到底太刀打ちできません。
かといって、政治経済に深く関わる解決策は、複雑に絡みあう事情で現実性・即効性が薄いのも確か。
いくつものNGO団体が今も援助に動いていますが、その力にも限界があります。
ですので、たとえば各国の企業が協力して、経済活動を持続させながら「エイズ問題」解決に動く仕組みが整ったとしたら、きっと大きな力を発揮するはずです。
この発想には、前提として、小さな団体が各々支援をするよりも、世界共通の大きな支援の仕組みがつくれないか?という既存ルールへの疑問の呈示が含まれています。
“みんなでつくる新世界”の法則をあてはめると、どのような解決策があり得るのでしょうか?
ここでご紹介するのは、各企業が「赤い製品」をつくることで社会貢献になる仕組みをつくった“プロダクト(RED)”です。
“プロダクト(RED)”とは、グローバル消費財メーカーが、(PRODUCT)RED という共通ブランドの商品を開発・販売する仕組み。
これにより、挙げた収益の一部を世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)に寄付することで、アフリカのエイズ対策プログラムを支援することができます。
ロックバンドU2のボノと、国際NGOであるDATAのボビー・シュライバーが発起人となり、 2006年からはじまったこの取り組みですが、参加企業はこれまでに
アップル、コカ・コーラ、スターバックス、ナイキ、エンポリオ アルマーニ、Gap、コンバース、アメリカンエキスプレス、インディペンデント紙、ランセット誌
などなど、まさに豪華な顔ぶれ。
実際にアップルのサイトでは、日本版でもこのようなページが開設されています。
かなり大きなムーブメントとなったプロダクト(RED)ですが、その要因として、当時叫ばれていた「企業の積極的な社会貢献が必要」という風潮や、それに対する大義名分の大きさが強く影響したことは間違いありません。
しかしそうはいっても。各企業にとってはこうした取り組みに乗っかるのは腰が重いもの。
やるからには中途半端にやってもビジネス的な見返りが得られませんから、いかに「参加が簡単で、それでいて好印象形成につながる(目立てる)か」も重要なポイントとなるはずです。
その点、プロダクト(RED)では、“赤というカラバリをつくるだけで参加が可能”という容易な参画ハードルと、U2のボノやアップル・スターバックスといったイケてる集団がまず声を上げたことで、“参加すること自体が「クール」というイメージを植え付けられた”ことが、参加企業が拡大した大きなポイントだと思います。
言うには易し、行うには難し、ではありますが、世界的な取り組みとなった要因として見逃せないポイントだと思います。
[Chapter 3] ブレスト・トライアル
老朽化がすすんだ「神社」の改修工事費を集めるには?
この章では、仮のお題に対して、ブレスト形式で実際に法則の活用練習をしてみます。
たとえば、地元に古くからある神社の老朽化が進み、回収のために寄付金を募らなければいけないとしたら?
“みんなでつくる新世界”の法則を活用すると、どのような解決策が考えられるでしょうか。
少し、ご自身でも考えてみてください。
いかがでしょうか。
たとえば、で僕が思いついたことを以下列挙してみますが、
(もちろん仮のお題なので、正解不正解などありません)
・神様、といえど、人の助けを借りないと存続できなかったりする
→ここらで神様に貸しをつくっておくと、願いも真剣に叶えてくれそう
→寄付をすると、神様の上客(お得意様)になれる。なので、
*永久保存版の十二支すべてが書かれた「絵馬」がもらえて、神社の壁にずっと掛けて叶えようと頑張ってくれる
(壁にずらっと掛けられた様が、観光名所的になる?)
*1年に1回は無料でお祓いが受けられる などなど
(絵馬のカタチも工夫したいところですね)
・神社を「自分の家の“はなれ”」のように自由に活用できたら楽しい
→寄付をすると「仮)住職」という肩書きがもらえる
*その証明として御札や名前入り提灯がもらえる
*敷居内で座禅を組んだり、敷地の一角で花を栽培できたりする
・仮に、この神社を守りたいと思っている商店街組合があるとする
→組合員が経営する各店舗を、寄付を募る拠点にできるとチャンスが広がる
→組合員のお店のレジ横を「出張〇〇神社」として開放してしまう
*お釣り募金を「日本一気軽に入れられるお賽銭箱」に変えてしまう
*募金をした人はその場で本日の占いおみくじが引ける
(これくらいのサイズの神社&お賽銭箱を、レジ横の募金箱として置くイメージ)
パッと思いついたアイデアはこの程度になってしまいますが…
Facebookページの記事投稿のコメント欄はいつでも開放していますので、もし何か他にアイデアを思いつかれましたら、ぜひぜひそちらに書き込んで教えていただけますと嬉しいです。
いずれにしても、今回の法則を実践する場合は、置かれた状況に対する鋭い洞察と、参加方法の細部に至る設計が必要だと思います。
「より多くの人を参加させたい」というベクトルでアイデアを考えるシーンは多々あると思いますので、そうした際の思考の一助となりましたら幸いです。
※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。


















