商品の良さを伝えるときや、社会問題の重要性を訴えかける際、たいていの人は、残念ながらそのメッセージに興味を示してくれません。
それはやはり、商品を使う人や社会問題に直面する人の「悩み」や「状況」に対し、想像力が働かないからでしょう。
ほとんどの人は、自分自身と、その周囲のことにしか関心がないものです。
だとすると、いかに“当事者の気持ちを想像させられるか”が、興味を抱かせるポイントのひとつになります。
今回は、様々な仕掛けで当事者の気持ちを体感させる“当事者疑似体験”の法則をご紹介します。
[Chapter 1] 事例から法則を読み解く
街を歩いていたら、靴に丸いシールが…そこに書かれていたメッセージとは?
こちらはユニセフがドイツで行った、ゲリラキャンペーン。
彼らが訴えかけたかったのは、今なお途上国や紛争地域に残る「地雷」の怖さです。
しかし、よく見られるような「全世界では今なお〇〇万個の地雷が埋められており…」といったメッセージで先進国の人々に訴えかけても、安全が当たり前、の彼らにとっては、その危険性を想像するのは困難。
寄付や支援活動へと行動を促すには限界があります。
そこでユニセフが考えたのは、世界で起きている「安全だと思って歩いていたら、地雷を踏んでしまった」という経験を、疑似体験させてしまうこと。
取り組みはとてもシンプルで、地面のタイルに似せたデザインをあしらった両面シールを制作し、踏んでしまうと靴の裏に貼り付いてしまうというものでした。
歩行者がうっかり両面シールを踏んでしまうと、足の裏を見ますよね。
裏面に描かれた地雷、そしてそこにはこんなメッセージが書かれていました。
In many other countries you would now be mutilated! Help the victims of landmines!
(この国じゃなかったら、あなたは今ここで、足を無くしていたかもしれません。地雷の犠牲者にどうか救いの手を!)
手弁当程度のコストでも実施でき、かつSNSでも拡散性のありそうな、上手な仕掛けだと思います。
これとほぼ同じ手法が用いられている事例として、“鳥インフルエンザbot”というものもありますね。
こちらはTwitter上のアカウントなのですが、不特定にユーザーを突然フォローし、5日くらい経つとフォロー解除するというもの。
「タミフルbot」というのもあり、これをフォローすると早く治ったり、「予防接種bot」をフォローしていれば「鳥インフルエンザbot」にはフォローされないといった展開も。
おそらく運用そのものが活発でないため、ご存じの方は少ないと思いますが、手法自体はとてもユニークなのではないでしょうか。
これらの事例に共通するポイントを、以下まとめます。
WEBニュースで事件の悲惨さを強く訴えかけるには?
もちろん、普段から社会問題や国際情勢に関心があり、常に目を光らせている人にとっては、こうしたニュースを見るだけで心を動かされるでしょう。
しかし多くの人にとっては、もはや感覚が麻痺しまって、事件の重大さ、悲惨さを実感することができないのではないでしょうか。
であれば、“当事者疑似体験”の法則にもとづいて、もっとニュースを強く訴えかけることはできないだろうか?
そもそも今のWEBニュースは、どれもこれも「プロが撮った画像+記事」というフォーマット化されています。
最近は動画を用いたニュースも見られるようになりましたが、そこにもテレビのニュース番組で見るような演出、記事テロップといった編集が施されています。
しかし、凄惨な事件であればあるほど、その場に立ち会わせているかのような“生の情報”こそが、最も訴えかける力が強いのではないでしょうか。
生活者への配慮だのと言って、ほとんどのニュースは必要以上にデフォルメされ、訴求力を弱められてしまっているのかもしれません。
そんな疑問から生まれたアプリがあります。
“Condition ONE”というiPad用のアプリで、そこにはアフガニスタンの米兵をテーマに撮影したドキュメンタリー動画『Hell and Back Again』など、10~15分の作品がいくつか公開されています。
最も特徴的なのは、動画を見ながらiPadを傾けることで、視点が動くという仕組み。
360度ビデオに似ていますが、これをニュース(ドキュメンタリー)に応用しています。
例えば、銃撃音がどこから来たかを確認したいと思ったら、身体をiPadと一緒にちょっとひねればいい。
まるでその場に自分がいるかのような映像で、ニュースそのものへの没入体験を可能にしています。
Condition ONE Demo from Danfung Dennis on Vimeo.
(現在、このアプリは配信停止されているようです…残念。)
そもそもニュースになるような出来事というのは、目の離せない強さが、生の現場にあったということ。
そこに対して関心を持たせたければ、いっそ、その場にワープできるような体験をつくればいい。
この可能性に目をつけたNHKは、“360度映像のニュースアーカイブを公開”という取り組みを最近始めましたね。
今後のニュース報道の形態は、どんどん変わっていくかもしれませんね。
[Chapter 3] ブレスト・トライアル
新潟への移住を促進するには?
かなり恣意的なお題ですが、自分がいま少し関わっているので…
どこでもいいのですが、たとえば新潟への移住を促進する企画担当者になったとします。
地方創生も叫ばれる中、新潟への移住を促す施策として何が考えられるでしょうか?
ここではあくまで“当事者疑似体験”の法則を活用する練習なので考え方は縛られますが、これまでの事例とは違って、新潟に住みたくなるようなポジティブな疑似体験を創出しなければなりません。
それにはまず、新潟に住む人が、僕のような都心に住む人にとって羨ましいような「状況」や「出来事」を想像します。
(一応断りを入れておくと、全くの想像で話を進めますので事実とは異なることもあると思います。)
真っ先に思い浮かぶのは、なんといっても「食の豊かさ」でしょう。
水産物から農作物まで新鮮で美味しいものがたくさん身近に手に入るのだと思いますが、その中でも特に気になるのは、お米。
コシヒカリでも有名なこの県には農家もたくさんあると思うので、「日本一おいしいお米が毎日食べられる」ということや「米が育つような自然豊かな環境」は、都会の僕にとってはとても羨ましいもの。
だとするならば、たとえば、“遠隔農業体験”ができると面白いかもしれません。
耕作放棄地の一角を、日本全国の人に開放。
稲を植える作業などは人の手が必要だと思いますが、水やりや害虫排除などを行える遠隔ロボット(ドローン?)を配置して、毎日5分の手入れをアプリからゲーム感覚で行うと、実際にロボットが作動して作業をしてくれる。
育てたお米は自分の家に送られてきて、「こんな美味しいお米が農家からもらえたり、買えたりするんですよ」なんて言われたら、新潟っていいなぁと思うかもしれません。
美味しいお米が手に入る、という体験を再現可能にするわけです。
ここまでの取り組みだと、さすがに壮大すぎるでしょうか。
他に新潟の魅力を考えると、たとえばスノーボーダーの人にとってはスキー場が近いことも住む魅力になるかもしれません。
だとするならば、スキー場に“GoPro(&360度カメラ?)付き特性ゴーグル”を配って、ボーダーたちには「観光大使」という名分で装着してもらう。
「観光大使」ですから、当然その日のスキー代はタダにしたいですね。
彼らの目線で撮影された映像はSNSで配信され、「こんなスキーを毎日だって楽しめる」とメッセージを添えられれば、ボーダーの人たちは住みたくなるかもしれません。
(こんなイメージの映像です。)
あるいは、あきたこまちが有名な秋田には「秋田美人」がいますが、なぜ新潟にはいないのでしょうかね?
ちょっと下世話ですが、県中の「新潟美人」を掘り出して、“新潟美人と同棲生活できる”ような体験360度映像をつくる、といったネタ的PRもあるかもしれません。
新潟の街コン団体とタッグを組んで、「でも本当に新潟美人と出会いたければ、新潟に来ないとね」といったメッセージを打ち出す。
ざざっと考えただけなので、効果の程はどれほど、ということはありますが…
あくまでブレストでの活用イメージとして、書かさせていただきました。
移住促進の素晴らしい事例や、他に思いついたアイデアがあればぜひ、お知らせください。
Facebookの記事コメント欄はいつでも開放していますので、そちらにお願いします。
※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。
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