音や味などの「目には見えないもの」や、遠い国の現実といった「目にしにくいもの」を相手に伝える際、どうしても実感に欠けてしまい、なかなか伝わりにくいものです。
そんな時、非常にシンプルですが、様々な表現手法で目には見えないものを「可視化」し、視覚的に訴えるという方法があります。
今回は、そんな方法のひとつ、“ビジュアライゼーション”の法則を取り上げます。
[Chapter1] 事例から法則を読み解く
【衝撃】人間を地球の1カ所に山積みしたら…の絵面が強烈
“価値”の再認識、という事例ではありませんが…
例えば、いま地球にいるすべての人間をガーッと1ヶ所にかき集めて、砂場の山のように積んだとしたら。
一体どうなるのでしょうか。
想像もつかないそんな疑問を、実際にシミュレーションした人がいました。
以下が、その画像になります。
なんとも、衝撃の絵面ですね…。
場所はグランドキャニオンだそうですが、そこに全人類の山を作ったとして、必要な広さはたったのこれだけ。
グランドキャニオンを埋めることも、大きく地球の地形を変えることも到底できません。
さらに例えば、今まで存在した人間全てを山にしたとして、そのおよその人数は1060億。
そうだとしても、このGIFの人山が15個できるくらいだそうです。
グランドキャニオン自体、相当な広さを誇っているとはいうものの、そのほんの一部しか埋めることはできないんですね。
この画像を見ることで、「死体の山のような、膨大な人の山」にショックを受けるだけでなく、個人的には「たったこれだけの規模の種族が、地球をここまで破壊してしまうのか…」「全世界で核戦争が起きた後は、こんな風景が広がるのかな…」といった、環境問題・社会問題を考えさせられるきっかけにもなりました。
全世界に70億人以上、といわれてもピンときませんが、このようにビジュアライゼーションされると、一気に実感が湧いてきます。
もう少し、社会問題の喚起的要素の強いビジュアライゼーションの事例を挙げると、NYの空気中の二酸化炭素排出量を可視化した動画が当てはまります。
●New York City’s greenhouse gas emissions as one-ton spheres of carbon dioxide gas Carbon Visuals
街に排出される二酸化炭素の様子が、青いボールで可視化されています。
ボール1つは直系33フィート(約10メートル)で、二酸化炭素1トン分。
1年経つと、ニューヨークの街はどうなるのでしょうか。
街中が、すっかりボールで埋もれてしまいました。
2010年、ニューヨーク市は5400万トンもの二酸化炭素を空気中に排出しました。
そのうち75%は建物から、残りは交通機関から排出されています。
…とだけ聞いても、何がどうヤバいのかが、ピンときません。
このようにビジュアライゼーション化することで、物事の重大さをあらためて再認識させることができ、行動喚起にもつながります。
目には見えない・見えにくい物事の価値や重要性を認識してもらうための手法として、王道ですが、有効な手法のひとつだと思います。
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[ “ビジュアライゼーション”の法則|Point ]
◎「目には見えない(目えにくい)」物事の価値や重要性を、比喩表現を用いながら可視化する
◎絵面に「ショッキング(巨大、大量、神秘的など)」な要素を盛り込むと強い
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以降では、この法則を念頭に置きながら、活用イメージをさらに深めていきます。
[Chapter2] 法則から事例を読み解く
音の振動で“高音質を可視化”した「クラドニ図形」が美しい
もしあなたが音楽プレイヤーの商品担当者で、“めちゃくちゃすごい高音質”を伝えたいとしたら、どのような伝え方を考えるでしょうか。
ヘッドホンの音質にとてもこだわっているような人であれば、どんな音が“いい”のかがわかるので、いかに高音質かを素直に語れば伝わります。
しかし難しいのは、特別音質にこだわっていない人たち。
彼らはiPhoneとその付属イヤホンの音質に満足してしまっていますので、音がどんなに“いい”のかを語っても(あるいは聴かせても)、彼らの中には“本当にいい音の基準”が存在していないので、それだけではなかなか音の良さが伝わりません。
そんな課題に対しては、“いい音だからこそ可能”な、「高音質のビジュアライゼーション」ができれば、もっとわかりやすく音の良さを伝えられるかもしれません。
次にご紹介するのは、SonyのWALKMANが“高音質の可視化”を試みた「オンガクの結晶」というプロモーション。
“流砂の乗った板に音の振動を伝えると、一定の周波数ごとに「神秘的な幾何学模様」が浮かび上がる”という物理現象、通称「クラドニ図形」を活用したアート作品です。
SONY オンガクの結晶 from Keisuke Hakomori on Vimeo.

正方形に並べられた7×7=49台のWALKMANと、クラドニ図形を生成するためのボックス。
全体の音楽に合わせてWALKMANが一定の周波数で音を出すと、その振動がボックス内の砂に伝わり、様々な模様を描き出します。
(周波数によって振動数が変わり、振動数が変わると描き出される模様のかたちも変わります。)
一般的な物理現象として、このような現象が起こること自体、とても神秘的ですよね。
様々な周波数を細やかに奏でられるほどの高音質を誇る“WALKMANだからこそ”表現可能な、とても美しいプロモーションです。
これなら、耳が肥えておらず音の良さがわからない一般消費者にも、「なんとなく音がすごそう」であることが伝わるかもしれません。
※「クラドニ図形」に関してさらに詳細を知りたい方は、以下のリンクも覗いてみてください。
見えないものの価値を、文字通り「見える化」するという切り口。
特に、こうした物理現象を探し当てるのはなかなか難しいですが、ぴったりなものを見つけられると、ノンフィクションである分、人の心に訴える力も強いものになりますね。
[Chapter3] ブレスト・トライアル
「世界の貧しい地域」の“リアル”を可視化できないか?
後発途上国のスラム街や、紛争地域の難民キャンプ…
世界ではいまだに、決して恵まれているとはいえない状況下で生活を強いられている人がたくさんいるのは、周知の事実です。
ですが、日頃接する報道や記事で出てくる上記のような写真を見て、なんとなく「知った気」にはなってはいるものの、その現状に対してはあまりにも“リアリティに欠けた危機感”だけを抱いている、という人は多いのではないでしょうか。
メディアに切り取られた象徴的な生活風景ではなく、もっと、リアルな光景を可視化することはできないでしょうか。
旅行で訪れて現地を目の当たりにするような、そんなありのままの光景を見える化することはできないでしょうか。
そこでふと、思い至るのは、google earthの活用です。
以前、難民支援のUNHCRは、プロモーションで「google earthと連動して現地の様子が見られる」という施策を展開していました。
「google earthで世界各地の場所を見る」ということは、つまり「その場所のありのままの様子を覗き見れる」ということです。
その認識は、google earthを知っている人なら誰しもが持っているものでしょう。
つまり、そこに映し出される光景には、一切ウソがないということ。
で、あれば。
全てのWEBの報道記事に「google earthの位置情報を付記する」というアイデアはどうでしょう。
その記事を読んで、少し興味が出た人は、google earthで現地の場所をクリック。
たったそれだけの行動で、現地の真の姿が可視化されるわけです。
映しだされた“リアル”を見て、そこで本当に「人が生活している」のだと実感する。
さらに興味が出て、自分で位置情報を少しずらしながら、その場所を旅行気分で探索する。
そうすることで、どんどんと、その記事で書かれていることや社会の問題に対する関心が芽生えます。
もちろん、よりプロモーション的に考えるのであれば、「google earthを覗くと、お出迎えするように現地の人が立っていて、位置をずらして探索すると、人々の生活シーンがよりわかりやすく見られるようになっている」といった仕組みをつくってもいいかもしれません。
(google earthには、画像自体が撮影されていないところもありますので、そういう場所にこそ、こうした取り組みを実施していくということです。)
単に「可視化」するだけではありますが、たったそれだけでも、人々の興味関心が移り変わっていくものだと信じています。














