今回ご紹介する法則は、その名の通り、「無価値だったのものを価値化する」という法則です。
人が生活する上で行う「何気ない動作」や、半ば慣習的・当たり前に存在する「何となくあるもの」って、見渡すと結構あったりするものです。
それらを見過ごさず、何かしらの価値に変えてしまうことができれば、人々の生活はもっと豊かになるかもしれません。
様々な事例から、この“無価値の価値化”の法則を紐解いていきます。
[Chapter1] 事例から法則を読み解く
「くつろぐだけ」でニット帽が編めるロッキングチェアーが便利すぎる
こちらは、「Rocking-Knit(ロッキングニット)」と名付けられた、スイスの学生が考案した作品。
どんな機能を持つ椅子かというと、なんと「椅子に座ってゆらゆらと揺れているだけで、頭上にある自動織り機がニットを編んでくれる」というものなんです。
恋人からのプレゼントがこんな風にして編まれていたら、ちょっと切ないですが…笑
しかし、「椅子に座ってゆらゆら揺れる」という、これまで無駄になっていた動力を“ニット帽を編む”力に変換してしまおう、いう発想は、エネルギーの有効活用という点でとても魅力的だと思います。
このように、「無駄になっていた動力」(無価値)を、別の力(価値)に変換するというアイデアは、他にもいくつか見ることができます。
以下、簡単に事例をみていきましょう。
● キックの衝撃を電気に変えるサッカーボール「SOCCKET」
ボールひとつあれば遊べるとあって、貧しい地域でも親しまれているサッカー。
そのボールを「蹴る」力をつかって発電できる「SOCCKET」というプロダクトがあります。
このサッカーボールの仕組みはいたってシンプルで、ボールの中に振り子のような発電装置と蓄電装置が備わっており、ボールを蹴ると電気が蓄えられます。
蓄えられた電池はソケットから供給され、LEDライトなら30分のプレイで3時間点灯することができるそうです。
● 遊具を回す力で水を汲み上げる「プレイ・ポンプ」
非営利団体プレイ・ポンプ・インターナショナル(PlayPumps International)がアフリカで広めようとしているのは、プレイ・ポンプと呼ばれる遊具。
この遊具のユニークな点は、ポンプと一体になっているメリーゴーランドのような遊具を回転させることで、地下から水をくみ上げることができる点です。
特にアフリカ農村部では水設備が整っておらず、遠方まで水汲みに行くのは子どもたち。
そんな中、プレイ・ポンプを使えば「遊ぶだけ」で水が近場で手に入り、彼らの安全や教育のための時間も確保できるという、まさに夢のような器具です。
● 地下鉄の廃熱を使って暖房を届ける「Bunhill Heat and Power」
ロンドンの地下鉄ノーザン線の通気口から出る廃熱を家庭に配管で送ることで、無料の暖房を提供し、年間500tの二酸化炭素排出を削減。
そんな、地球にも消費者のお財布にも優しいプロジェクト「Bunhill Heat and Power」が進行しています。
また、ここでは取り上げませんが、高速道路の摩擦熱を利用して発電するといったプロジェクトも各国で行われるなど、「日常にある様々な無価値の動力を電力といった価値に変える」取り組みは、随所でみることができます。
何も価値のなかったところから新たな付加価値が生まれるわけですから、実現できれば相当魅力的な機能となるに違いありません。
それには様々な技術の応用が不可欠ですが、だからこそ鋭い洞察力を持って、日常的に発生する一見無価値なもの(動力)を他のものに活用できないか、目を配りたいものです。
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[ “無価値の価値化”の法則|Point ]
◎ある・やるのが当たり前になっている「モノ」「動き」をつぶさに観察する
◎モノや動きを活用して「新しい価値」を生めないか考察する
◎当たり前化しすぎているプロセスほど、価値化することで驚きが生まれやすい
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以降では、この法則を念頭に置きながら、活用イメージをさらに深めていきます。
[Chapter2] 法則から事例を読み解く
セキュリティの「文字認証」を価値化できないか?
セキュリティの固いWEBサイトにログインすると表示される、あの「読みづらい文字」。
きっと一度は目にしたことがあると思います。
たいていの文字は本当に読みづらく、解読するのも一苦労ですが…
そんな、セキュリティを強化することと引き換えに人をいらつかせていた「セキュリティの文字認証」を価値化するとしたら、一体どのようなものが考えられるでしょうか?
Luis von Ahn(ルイス・フォン・アン)氏はこの点に目をつけ、「セキュリティの文字認証」という無価値を価値化させることに成功しました。
その方法とは、「コンピューターが読み取れない“電子書籍化したい本の文字”を人間に読み解かせる」というもの。
つまり、あの意味のなかった文字列をすべて「コンピューターが読み解きたい本の文字」に置き換え、人間に読み解かせることで、結果7億5千万人もの人を「本の電子書籍化」に協力させてしまいました。

文字が2つ表示されるのは、そのうちのひとつを「コンピューターが正解を知っている文字」にすることで、コンピューターが正解を知っている方の文字を解読できた人を「もうひとつの方の文字も解読できる人」と認識するためです。
無価値だったものを価値化した、お手本となるような事例だと思います。
先ほどの事例では「無駄な動力」に焦点を当てていましたが、今回は「無駄に(とりあえず)あるもの」を価値化した事例でした。
こちらも他にもいくつか類似事例を見ることができますので、以下簡単ご紹介いたします。
● コイントスのコインを募金に変えた「The heads and tails coin donation」
サッカーの試合前、陣地を決める際に行われる、コイントス。
そのコインを、そのまま募金してしまおう、という施策でした。
着眼点が素晴らしいアイデアだと思います。
● 有名選手が引退する試合の「現場の空気」に140万円超の値が!
米プロバスケットボール(NBA)ロサンゼルス・レイカーズのスター選手、コービー・ブライアントが今月の13日に引退試合を迎えました。
そんな折に、インターネットオークションのeBayで売り出された“あるもの”が話題となりました。
それは、彼の引退試合の「現場の空気」が入ったビニール袋。
最終落札価格はなんと、13,600ドル(約147万円)もの値がついたようです。
その後、eBayは「自然の物に値段をつけ、何千ドルもをだまし取る行為」としてページを削除したとのことですが、「空気」という無価値なものを価値化してしまった、とても面白い事例だと思います。
● MVをオークションに変えてしまった「GOLDEN CHAINS」
こちらは、ALBというアーティストのMVなのですが、その仕組みが秀逸です。
MVが始まると、ブラウザの中から主人公が自分の私物をブラウザの外に放り出します。
すると、その私物がクリッカブルになり、クリックするとオークションサイトへと飛んでアーティストの私物を実際に買えてしまう、というもの。
「このアーティストは売れてなくて金欠で困っているため、このような施策をやるに至った」という理由・文脈づくりも含め、面白い仕掛けになっているのではないでしょうか。
[Chapter3] ブレスト・トライアル
「改札をくぐる音」という無価値を価値化すると?
改札をくぐり抜けていく、たくさんの人々。
そんな光景は、都心に住む人であれば誰もが目にしたことがあるかと思います。
ピッ。ピッ。ピピピッ。ピッ。
友達と駅で待ち合わせをしている際、改札の前で耳を澄ましていると、こんな「改札をくぐる音」が断続的に鳴り響きます。
その音を聞いていると、いつもふと思うことがあります。
それは、「なぜ、改札をくぐる音は、すべて音色と音程が一定なのか?」ということ。
冷静に考えれば、この音、ドレミファソラシドの音階がついていてもいいし、ピアノやサックスなどの音色になっていてもいいはず。
もし、改札をくぐる音に音階や音色がついていれば、改札をくぐる瞬間、まるでオーケストラのように、その場その時に居合わせた人たちで即興の音楽を奏でることができるかもしれません。
そうすることで、繰り返しの毎日、職場や学校に重い腰を上げて向かう際には、即興の音楽が小さな楽しみになるかもしれません。
1日がんばって帰ってきた際には、癒やしになるかもしれません。
みなが一様に同じ格好をして目的地へと向かう、少々ロボットじみたこの国の風景にこそ、もう少し遊び心があってもいいのでは、と思うのです。
こうした発見・発想ができるかどうかは、普段から物事に疑問を抱いて「面白がる」姿勢を持ち続けているかにかかっているように思います。
大切にしたい視点ですね。
※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。
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