今回ご紹介する法則は、ソーシャルグッドな“課題解決”というよりは、“問題提起”に近しい効力を発揮します。
“危険の見える化”の法則を取り上げます。
[Chapter1] 事例から法則を読み解く
「もしもマリオが車椅子だったら?」動画に考えさせられると話題
言わずと知れた名作ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」。
このゲームのある動画が、最近話題となりました。
それはどのようなものか?
まずは以下、ご覧いただければと思います。
最初はいつも通りのマリオのはずが…
着地の瞬間に足を挫いてしまい、救急車に搬送されてしまいます。
そうして戻ってきたマリオは、車椅子に乗って再登場。
しかし最初の土管が越えられず、マリオは泣いてしまいます。
そんな姿を後ろから見守るルイージが、何かを思いついたようです。
そして再チャレンジしたステージが、なんとバリアフリーに!
ステージクリア後には、「もうこんな80年代のような社会ではない!」の文字。
「誰でも快適に移動できるように。」
そう、これは「バリアフリー化されていない世の中なんて時代遅れだよ!」ということを、世界中で親しまれているマリオの世界を通して訴える動画だったんですね。
健常者のほうが大多数を占める現実世界では、どうしてもバリアフリーの必要性を感じる機会は少ないため、様々な身体障碍を抱える人たちにとっては住みにくい世界のままになっているのは事実の通り。
そんな中、先程ご紹介した動画と同様のことをリアルな世界で再現して「危険」を可視化したところで、少し悲愴感漂う訴えになりすぎて、なかなか人は見向きもしてくれません。
なので、こうした比喩表現をうまく活用しながらチャーミングに訴えることで、動画を見させて「考えさせられる」という状況をつくることができます。
※
リアルに非バリアフリーの危険性を可視化をする場合も、やりようによっては強い訴求力を発揮します。
JESKIというアーティストが制作した、以下のたった1枚のグラフィックはまさにそれに該当するかもしれません。階段の前で、引き返す車椅子のタイヤ痕だけが記されたポスターです。
もうひとつ、比喩表現を活用しながら「危険」を見える化した事例をご紹介しましょう。
「Stop the bullets.Kill the gun.(弾丸を止めて、銃を殺そう。)」という映像です。
卵、グラス、りんご…様々な物体が弾丸に撃ち抜かれて砕けていく、ある意味美しく目が離せないスローモーション映像が続いていきます。
そして最後に出てくる“撃ち抜かれる物体”は、なんと、少年の頭。
思わず目を覆ってしまう衝撃のラスト、弾丸が少年の頭に当たるまさにその瞬間に、「Stop the bullets.Kill the gun.(弾丸を止めて、銃を殺そう。)」のコピーに変わります。
映像ならではの迫力と、銃の危険(恐ろしさ)がひしひしと伝わってきますね。
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[ “危険の見える化”の法則|Point ]
◎見過ごされている/迫り来る「危険」をわかりやすく可視化する
◎「やや大袈裟に表現する」「比喩を用いる」と訴求力が増す
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以降では、この法則を念頭に置きながら、活用イメージをさらに深めていきます。
[Chapter2] 法則から事例を読み解く
「塩分の摂り過ぎ」を注意喚起する“パステルカラーの塩”が衝撃的
現代人は「濃い味」が好き、とはよくいいますが、旨味を倍増してくれる調味料といえば、塩がありますね。
世界保健機関(WHO)では食塩摂取量の目標値を1日5グラムとしていますが、日本では平均して男性で11.3グラム、女性で9.6グラムもの塩分を摂取しているそうです。
そして、場所は代わりアルゼンチンでは、ひとりあたりの塩分摂取量はなんと平均15グラム。
こうした習慣が高血圧をはじめとした様々な病気を引き起こすきっかけとなるケースが多いのだといいます。
しかしこの塩、色が「白」で水分を含むと溶けてしまいますので、そこまで身体に悪いイメージはありませんし、普段の食生活でどの程度摂取しているかを意識することはなかなかありません。
そんな状況に目をつけたのが、医療に関する研究、教育、啓発活動などを行うアルゼンチンの医療財団・Fundacion Favaloroでした。
塩分過剰になりがちな国民の食生活を改善するために、“危険の見える化”の法則にのっとって、ユニークな塩を開発しました。
その塩というのがこちら、ピンク、緑、紫、水色に着色された、鮮やかなパステルカラーの食卓塩。
こちらを「食べる」と考えると、気持ち悪くなってしまいそうですが…
しかし、だからこそ、この塩を使うことで「いかに自分が身体に悪いものを多く摂取してるか」が、一目瞭然で見える化されることになります。
Fundacion Favaloroは、毎年3月に世界各地で開催される『世界減塩週間』の期間中、このカラー食塩をレストランに置いたり、スーパーや街中で無料配布するなどして、人々に塩分の取り過ぎに対する注意を喚起しました。
するとこの取り組みはテレビやラジオで取り上げられ、SNSでも拡散。
そしてなんと、アルゼンチンの国民的スターであるリオネル・メッシ選手までもがコメントを寄せるなど、社会的に大きな注目を集めることに成功しました。
ここまで大きな広がりを見せた背景には、やはり全世界的な潮流となっている健康志向、オーガニックブームがあると思いますが、PR視点で解釈すれば「見えなかったものが(ショッキングなかたちで)見えるようになった」ことで、画像・映像メディアが“取材しやすい=絵作りがしやすい”という要因が重なった影響が強いと思います。
とても上手なアイデアですね。
他にも“危険の見える化”の法則の例として、“車の事故”の危険性を訴えた事例を以下2つご紹介しましょう。
オーストラリアの自動車保険会社・NRMA Insuranceは、“車の事故”の悲惨さをありのままに訴えるために、新車ではなく事故車を「ショールーム」として展示しました。
また、TOYOTAベルギーでは、後方不注意により子どもの巻きぞい事故が増えていたことを背景に、駐車場の後ろの壁に「子どもが遊んでいる姿を描いたストリートアート」を施しました。
いずれも“車の事故”の危険性を可視化した、という点では一緒ですが、NRMA Insuranceは「注意喚起に特化」し、TOYOTAベルギーは「問題解決にまで踏み込んでいる」とも言え、それぞれその訴求方法は全く異なります。
ある問題に対し、どんな危険に着目するのか?
その危険性に、どうすれば注目してもらえるのか?
危険に気づかせることに特化するのか?問題解決にまで踏み込むのか?
着目するポイントや目的に応じて、しっかりと表現を考える必要がありそうです。
※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。
アイデアの補助線(Pinterest)| 危険の見える化 の法則
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