物事の価値を再認識させるために、あえて「本来想定されているユーザーとは違う人・物に使ってもらう」ことで、今まで知覚されるのことのなかった価値が表面化することもあります。
今回はそんな法則、“利用者の弱体化”の法則を取り上げます。
[Chapter1] 事例から法則を読み解く
【笑撃】太鼓を叩くクマの玩具を「最強のモーター」で動かしてみた結果
こちら、なんでもない普通の、小さな子どもを楽しませるための「太鼓を叩くクマの玩具」です。
こちらの玩具を、完全に規格外の「最強馬力」を誇るモーターで動かしてみたら…どうなるでしょうか。
実際にそんな実験を試みたのが、Twitterユーザーの“マンスーン(mansooon)“さん。
そしてこちらが、「最強馬力」を誇るモーターです。
モーターに「上級者向け」ってあるんですね…笑
この“プラズマダッシュモーター”とは、「回転数:250~280rpm (100r/min)」「最大トルク:19g-cm」という仕様で、モーターに詳しい人からしてみれば「鬼の馬力」を誇るモーターだそうです。
(なんでも、ミニ四駆の公式大会では「使用不可」のレベルだとか。)
こちらを、先ほどのクマの玩具に搭載したら、太鼓を叩く姿は果たしてどのようになってしまうのでしょうか?
以下が、その動画になります。
これは、ヘビメタバンドもリスペクトもののヘッドバンギング…笑
非常に愉快な動画ですが、この動画を観ることで、いかに「このモーターの馬力がヤバいか」が一目瞭然です。
翻して、たとえばこのモーターで、大きなロボットを動かしている動画を観たとしましょう。
その感想はきっと、「へー、なんかすごいんだね」で終わってしまうでしょう。
とても強い力で、とても大きなモノを動かしても、なかなかその凄さは伝わりにくい。
しかし、あえて小さなモノを動かすことで「力が有り余って悲惨なことになってしまう」様子を目にすることで、いかにオーバースペックかがありありと浮き彫りになります。
ある物事に対し、あえて利用者を“弱く”することで、物事の力強さ、その価値がわかりやすく表面化する。
これが“利用者の弱体化”の法則です。
この法則の汎用性を確認するために、少し違った事例も見ていきましょう。
次に紹介する事例は、microsoftの最新OS「Windows8」の“操作性の簡単さ”をアピールするために行われたプロモーションです。
こちらは、Windows8を紹介するブースです。
商品の前で立ち止まるお客さんに対し、スタッフが「よろしかったら簡単に商品説明しましょうか?」と声を掛けます。
了承するお客さんに対し、「ではスタッフを呼びますので、少々お待ち下さい。」と声をかけるスタッフ。
そして少ししてそこに現れたのは、スタッフ衣装を着た小さな少年でした。
お客さんはちょっと驚きながらも「えっ!君が教えてくれるのかい!?じゃ、頼むよ」と少年スタッフに声を掛けます。
少年スタッフは人差し指一本で、端的にわかりやすく商品デモを行っていきました。
最初は不安だったお客さんも、少年がとてもわかりやすく紹介してくれるので、思わず「君、すごいな!」と肩を叩いたりしていきます。
大勢のお客さんが始めは驚くものの、少年のデモを見ると次第に熱心に聞き入りました。
そして何より、お客さんから自然と笑みがこぼれていく姿が微笑ましいですね。
Windows8のウリを紹介する人を、子どもにしてしまう。
つまり、紹介者をもっとも理解力の低いはずの“弱者”にしてしまうことで、誰もが簡単に使えてしまうということを直感的に理解させてしまう。
とても上手なプロモーションだと思います。
先ほどのクマの玩具では、「モーターの強さ」を。
Windows8では、「操作の簡単さ」を。
どちらの事例でも、使う人・モノをあえて弱くすることで、物事の価値をわかりやすく伝えられているのがわかるかと思います。
なかなか実感させにくい価値をひと目でエモーショナルに伝えられる、上手いやり方です。
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[ “利用者の弱体化”の法則|Point ]
◎商品やサービスの「最も伝えたい価値」をひとつに絞る
◎その価値を「能力の低い人・モノ」に使わせる
◎「誰でも使えること」や「オーバースペックさ」により価値を表面化させる
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以降では、この法則を念頭に置きながら、活用イメージをさらに深めていきます。
[Chapter2] 法則から事例を読み解く
「目の見えない人」が写真を撮ることで立ち現れる、カメラの本質とは
今度は、また少し違った事例を通して“利用者の弱体化”の法則の汎用性を確認していきます。
次にご紹介するのは、サムスンが自社のカメラの本質的な価値に迫ったプロモーション、“insight”。
カメラとは、ご存知の通り、「目の前に広がる風景をありのままに切り取る」機械です。
しかし、サムスンは考えました。
「果たして、世界を知る方法は、“見る”ことだけなのか?」
ある意味、カメラという機械の性能を自己否定するような問いです。
そう、カメラは、ある個人の「いま、見えているもの」を切り取ることはできても、音、空気感、他の人が受け取りうる感覚…そういったものは、どうしても“削ぎ落とされて”しまいます。
そこには確実に、“カメラの限界”がある。
であれば、カメラには何ができて、何ができないのか?
それは、極端に問い詰めれば、「目が見えない人」がカメラを使うことで、立ち現れるのではないか?
そんな着眼のもと、サムスンは、目が見えないハンディッキャップを持った子どもたちにカメラを渡しました。
そして彼らは、周囲の音や触ってみた感覚から、感じるままにシャッターを切っていきます。
彼らが撮った写真に写っているのは、あくまで「目が見える人が知覚しうる風景」でしょう。
しかし、カメラを持つ子どもたちに見えているのは、きっと別の風景。
彼らの撮った写真は、その断片にすぎません。
そして彼らの撮った写真は、「展示会」というかたちで集約されていきました。
その展示で伝えるメッセージ、それは
Sight is but a one way to see the world.
ー 目で見る事は、世界を知る一つの方法でしかない。
世界は、「目で見るだけでなく、心の目で感じ取るもの」だという事実を突きつけます。
カメラに、できること。できないこと。
その両端を見つめることで、カメラの本質を炙り出す施策です。
こちらの取り組みは、世界最大の広告賞の祭典・カンヌライオンズ2012でプロモ&アクティベーション部門のゴールドを受賞しました。
[Chapter3] ブレスト・トライアル
電車の「整列乗車」に“利用者の弱体化”の法則を適用すると
この法則を、身近な問題に応用してみます。
たとえば、都民が毎日頭を抱える、電車の「整列乗車」問題。
忙しい、余裕が無いのはわかりますが…いますよね、列から外れて、ズルして乗り込もうとする人。
こうした当たり前のルールをどうしても守れない人というのが、残念ながらいるのが現状です。
この問題に対し、“利用者の弱体化”の法則を適用すると、どのような対策が考えられるでしょうか。
前提として、ルールを守れない人に対して抑止力を発揮するのは、「ルールを守れないことって“恥ずかしい”」ものだということを、自覚させてあげることでしょう。
整列乗車、なんていうものは、本来人間であればできて当たり前のことです。
さらに誇張して言えば、「猿でもできる」ことなはずなんですよね。
で、あれば。
いっそのこと、本当に猿に整列乗車をしてもらう動画をつくって、マナー啓発動画として車内広告で流すというのはどうでしょう。
さらにいえば、電車といえばJR、そしてJRのキャラクターといえば、ご存知ペンギンです。
なので、JRがやるとしたら、「ペンギンでも整列乗車はできるのか?」という実験動画をつくるのもいいかもしれません。
ペンギンにはもともと、カモのように一列になって歩く習性があります。
この習性を利用すれば、案外簡単に実験は成功するかもしれません。
この動画をもってして、「ペンギンでさえもできることを、人間のあなたはできないんですか?」と訴えるわけです。
そのチャーミングな姿も相まって、結構話題になりそうな気がするのですが、どうでしょうかね。
“利用者の弱体化”の法則の応用事例のご紹介でした。
※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。
アイデアの補助線(Pinterest)| 利用者の弱体化 の法則
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