プロダクトやサービスへの注目度をただ高めたり、全く新たな価値を付け加えたりするのではなく、顧客に自らとプロダクトやサービスとの関係性に気づいてもらい、自分ゴト化を促すことで、様々な課題解決に至ることもあります。
今回は、そうした課題解決手法のひとつ、“友達の友達はトモダチ”の法則をご紹介。
緊張して数値が乱れてしまう子どもの健康データを正しく測るためには?

病院に行くこと自体に拒否反応を示す子どもは、決して少なくありません。
そうした中、見慣れない病院でストレスを感じながらの受診では、脈拍や呼吸状態などの正確な健康データが得られないといった課題があったそうです。
しかし、では、どうやって解決すればよいか?
正常な健康データをとるためには、子どもが病院であっても、普段と同じようにリラックスできるようにしなければなりません。
この問題に着目したのが、クロアチアのスタートアップ「IDerma」。
彼らが開発したのは、医療センサーを内蔵したテディベア“Teddy The Guardian”でした。


このテディベアには身体のあちこちにセンサーが埋め込まれており、例えば子どもがテディベアの足を指で押すと、心拍と血中酸素レベル、血圧や体温などの健康データが測定できます。
なお、データは全て、Bluetoothを経由してスマートフォンに送られる仕組み。
親や小児科医は、平静時の正確なデータを知ることができます。


何より、彼らの目の付けどころの素晴らしいところは、“病院という子どもの大嫌いなものを、テディベアという大好きなものとくっつけてしまえないか”と考えた点だと思います。
なるほど確かに、普段から大好きなクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめるときには、緊張を伴う病院という場であってもストレスから開放されて穏やかな気持ちになりますよね。
自分が顧客に対して使って欲しい商品やサービスは、必ずしも、本人が「使いたい」「好き」と思ってくれているわけではありません。
むしろその逆、嫌われていたり無関心に近い状態であったりすることが多いと思います。
そんなとき、顧客本人ではなく、顧客の大好きなものと関係性を結んで友達になってしまうことで、気がつけばすっかり自分ゴト化されてしまう、という視点。
SNS時代にこそありがちですが、たまたま知りあった人にとりあえずFacebook友達申請をしたら、仲の良い友人の友達であることが発覚して、「大好きな友達の友達は、もはやトモダチでしょ」だなんて思って、急激に親近感や好印象を持つことがありますよね。
あの感覚には普遍性があると思い、“友達の友達はトモダチ”の法則と名付けました。
この事例では、嫌いだと思っていたものと仲良くさせてしまった、というところにアイデアの強さがありますね。
(なので別名、“ピーマンの肉詰め”の法則とも勝手に呼んでいます。)
この法則の活用方法をもう少し具体的に感じていただくために、別の事例も見ていきましょう。
全く人気のなかったオーケストラが観客数72%増を達成!その驚くべき施策とは?

人々から全く関心のもたれていなかった、ドイツのオーケストラ。
彼らは驚くべき方法で、観客数を大幅に増やすことに成功しました。
その鍵となるのは、先ほどからご紹介している、“友達の友達はトモダチ”の法則。
ドイツ国民が普段から愛している何かと手を結び、オーケストラを自分ゴト化してもらえないだろうか?
彼らが目をつけたのは、なんと「牛乳」。
ドイツ人の多くが牛乳を毎日飲む習慣があり、生活に欠かせないものとなっていました。
そこで彼らは、自分たちが生演奏するクラシック音楽を牛に聴かせ、「クラシック音楽を聴いて育った牛の牛乳」を製造。
さらにその牛乳を商品化し、人々が普段から足を運ぶスーパーマーケットで販売までしてしまいました。




コンサートと牛乳、決して結ばれるはずのなかったこの2つを関連づけて成果を上げたところに、このアイデアの面白さがあると思います。
中でも、“いい音楽は人以外の「いきもの」にも良い影響を与える気がしてしまう”というインサイトの発見が素晴らしいですね。
その牛乳を飲む、ということは、良質な音楽を自分の血肉にできる、という感覚に近い。
商品パッケージにまで音楽の良質感を感じさせることで、そうした右脳的な腹落ちもしやすくなっていると思います。
大事なのは、顧客の大好きな友達に飲み込まれないこと。互いを活かし合うこと。
ご紹介した2つの事例は、とても上手に友達関係を築けている素晴らしい施策だと思いますが、この法則を上辺だけで理解しようとすると、「じゃあ人気コンテンツとタイアップ企画を組もう!」となりがちかもしれません。
しかし、冷静に考えてみてください。
例えば「ワンピース」や「エヴァンゲリオン」「進撃の巨人」など、様々な人気コンテンツとタイアップする企業事例は数多見受けることができますが、その多くは一時的にコンテンツのファンを取り込む(つまり、売りにつなげる)ことはできても、その後も継続して商品を買ったり企業を好きになったりすることは、自分の経験を振り返ってみてもほとんどありません。

よくよく考えてみれば、魅力的な友達がいたとして、その人に腰巾着のように付きまとっていたり、依存しきって自分では何もできない人がいたとしたら、友達の友達、であっても友好関係を結ぼうとはなかなか思いません。
あくまでお互いに刺激を与え、いい部分を引き出しあっているような“友達の友達”の方が、やはり魅力的なはずです。
それと同じで、顧客の大好きな友達と関係を結ぶ際にも、媚びへつらって取り込まれてしまうのではなく、相乗効果が生まれるような良い関係性を築く必要があります。
たとえば、お洒落なメンズファッションに特化したECサイト「MR PORTER」は、今春コレクションを訴求するために、一般モデルではなく“Instagramで大人気のワンちゃん”にコレクションをまとわせて発表しました。

ワンちゃんのアカウントは企業の知名度を借りて有名になれますし、ECサイトは“オシャレで経済力のある人が大好きなワンちゃん”と関係性を結びながらコレクションをしっかり見せていくことで、良い関係性を築き合っています。
また、TOYOTAの「AQUA」は、若者のクルマ離れから少しでも興味関心を持ってもらおうと、「ドラクエ」「モンハン」というゲームの二大コンテンツとタッグを組んで、それぞれのBGMと舞台を背景にAQUAが疾走するCMを放映しました。
これを仮に、いたずらにキャラクターを登場させて安っぽくAQUAを紹介してしまうと、コンテンツに飲み込まれて媚びへつらっているようにしか受け取れません。
それを、コンテンツとの関わりをCGによる壮大な舞台演出と音楽に留めて、あくまで商品が主役となっている広告をつくりあげることで、コンテンツファンからむしろリスペクトされるような関係性を構築しました。
顧客の友達に関わりを持とうとする側も、「こっちもスゴイんだぞ」「あなたの友達をさらに高める存在なんだぞ」という部分が垣間見えると、良い関係を築けるのかもしれません。
こうした点にはしっかり留意した上で、“友達の友達はトモダチ”の法則を課題解決のヒントのひとつとして活用していけるのが理想だと思います。


